がん治療継続のためのアピアランスケア

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がん治療中の髪の脱毛

がんの化学療法においては、しばしば脱毛が起こります。脱毛の期間や程度は、使用する薬剤の種類や組み合わせ、使用量、投与期間などにより異なります。一般的には、治療開始2~3週で抜け始め、終了後約3か月で発毛し始めます。再び生えそろうまでには、半年~1年ほどかかります。

脱毛は、見た目にもがん治療を連想させ、患者さんにとって精神的なダメージが大きい副作用です。あらかじめ説明を受けていても実感がわかず、治療開始後の洗髪時に大量に抜けた毛を見てショックを受ける、ということもあります。

ケアのポイント

ウィッグの利用が一般的ですが、肌触りのよい帽子、スカーフ・バンダナなどを利用することもできます。

【ウィッグの選び方】

ウィッグの素材は、人工毛、人毛、人工毛と人毛のミックスと、大きく3つに分けられます。また、既成品やセミオーダー、オーダーかによって価格にも幅があります。セミオーダータイプは購入後に好みに合わせてカットしますが、既成品でもカットしてもらえる場合があります。

表 素材別ウィッグの特徴

特徴 おおよその価格例
人工毛 気軽に使い分けができる
静電気や毛羽立ちが起こりやすい
既成品は1万円台から
セミオーダーは3万円台から
人毛 馴染みがよく自然な仕上がり
手入れがしやすい
既成品、セミオーダーともに5万円台から
ミックス セットがしやすい
人毛の混合率が製品によって異なる
既成品、セミオーダーともに3万円台から

価格や特徴、かぶりやすさなどを、ウィッグサロンでよく相談して選びましょう。
「医療用」と記載されていないウィッグでも問題ありません。

【ウィッグのお手入れ方法】

ウィッグは、定期的に洗わないとツヤがなくなってまとまりにくくなります。週に1回程度洗うとよいでしょう。

素材にかかわらず手順は同じですが、人工毛、ミックスでは専用のシャンプーやリンスが必要な場合があります。

ドライヤーやコテなどを使用する場合、素材によって耐えられる温度が異なります。購入時に確認しておきましょう。

【つけ毛ウィッグ】

付け毛タイプのウィッグは、帽子やスカーフと組み合わせて使用します。フルウィッグより安価で、気軽に使用できます。また、その日の服装や気分に合わせて、おしゃれを楽しむこともできます。

【髪の脱毛に対するケアの工夫】

・ ウィッグに合わせて自毛をカット

がん治療前にウィッグを購入しました。ウィッグに合わせて髪をカットし、脱毛が気になったタイミングでウィッグに切り替えました。(30代女性)

・低価格ウィッグの利用

2~3か月ごとに、同じデザインの比較的安価なウィッグを購入して使用しています。メンテナンスの負担が少ないのが便利です。脱毛中は、美容院代がかからないので、経済的にも、それほど負担にはなりません。(40代女性)

ここが知りたいQ&A

Q シャンプーはこれまで使っていた市販品でもよいのでしょうか。

A 治療前に使用していた製品でも問題ありませんが、頭皮にかゆみやヒリヒリ感などが出た場合には、低刺激性のものに変えましょう。リンスやコンディショナーはしっかりすすぐことが大切です。脱毛によって毛量が減っているときには、リンスやコンディショナーは使用しなくても大丈夫です。

ドクターからのアドバイス

ウィッグを買っても、「なんとなくしっくりこない」と、使わなくなってしまう人もいます。そういう場合は、カットをしてみるのも一つの方法です。ウィッグメーカーのサロンやウィッグを扱う美容室などに相談してみましょう。

東京大学医学部附属病院 乳腺・内分泌外科助教
がん相談支援センター副センター長
分田 貴子 先生

1994年東京大学教育学部卒業後、医師を目指し2002年に同医学部医学科を卒業。同大学附属病院での研修を経て、2008年より国立がん研究センター中央病院で免疫治療の研究に従事。がん治療に伴う患者さんの外見変化の問題に直面し、対処法としてカバーメイクの研究、普及に尽力。2013年に東京大学医学部附属病院カバーメイク・外見ケア外来を開設。

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