がん治療継続のためのアピアランスケア

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がん治療中の眉毛・まつ毛の脱毛

化学療法により、頭髪だけでなく、眉毛やまつ毛の脱毛も起こります。治療が終われば再び生えてくることがほとんどですが、見た目の印象の変化が大きいことから、精神的なダメージを受ける人も少なくありません。

ケアのポイント

● 眉毛の脱毛時のケア
アイブロウ(眉ずみ)で描くのが一般的です。使ったことがない人は、抜ける前から少し慣れておくとよいでしょう。

【眉毛の描き方】

濃く描くと、かえって不自然に見えます。眉が残っている時期には、薄くなったところに色を足すだけでも十分です。

きちんと描きたい場合は、一度に仕上げようとせず、何度か描き足しながら調整するとよいでしょう。脱毛する前に写真を撮っておくのも一案です。

眉の形をかたどった眉用テンプレートなども市販されています。

手の肘をテーブルに、手首を頬に固定すると、アイブロウがブレにくく、眉毛が描きやすくなります

●まつ毛脱毛へのケア

まつ毛が脱毛すると、目元の印象が変わるだけでなく、目にゴミが入りやすくなります。メガネをかけることで、これらの問題を改善できることがあります。アイラインやアイシャドウでも、目元の印象を変えることができます。

●眉毛・まつ毛の脱毛に対するケアの工夫

【伊達メガネの使用】

眉毛やまつ毛の脱毛は、思っていた以上に違和感があり、伊達メガネをかけてすごしました。目にゴミが入るのを防いでくれるだけでなく、太縁で、大きめタイプのメガネにすることで、眉毛、まつ毛の両方の脱毛が目立たない感じになりました。(30代女性)

【アイシャドウの使用】

まつ毛が全部抜けてしまいました。アイラインを引くのは難しかったので、濃いめのアイシャドウを細目に塗っています。(50代女性)

【眉毛】

それまで眉を描いたことなどなく、毎日描くのも面倒だったため、「眉ティント」を使いました。眉の形に塗って時間を置いてはがすと、数日間キープできます。事前のパッチテストを行い、問題ありませんでした。(40代男性)

● 眉ティントとは?

皮膚の表面の層に眉毛の形に色を入れるアイテムで、3日から1週間程度持ちます。筆で塗るタイプとシールで色をつけて剥がすタイプがあります。行う場合には事前にパッチテストを行いましょう。

剥がすタイプの眉ティント

ここが知りたいQ&A

Q アートメイクを行っても問題ありませんか。

A アートメイクに含まれる色素成分が、MRI検査時に磁気に反応し、やけどを起こす例が問題となっていました。現在では、MRI検査でも問題ないとされる成分に改良されてきていますが、「アートメイクをしている人にはMRI検査を行わない」という医療機関が依然として残っています。必要な検査を受けられない不利益を避けるため、アートメイクはすすめていません。

Q アイブロウ(眉ずみ)はどう選べばいいですか。

A アイブロウには、ペンシル、筆ペン、パウダーなど、さまざまなタイプがあります。ドラッグストアのテスターなどで、使いやすい太さや硬さのものを探しておきましょう。ペンシルタイプの場合は、芯が柔らかめのものが描きやすいことが多いです。色は、濃いブラックではなく、ブラウンやグレーなどがおすすめです。自毛やウィッグの色に合わせると自然です。

ドクターからのアドバイス

眉やまつ毛の脱毛は、顔の印象に大きな影響を与えます。「自分の顔でなくなった」と感じる人もいます。メイクの習慣がなかった人は眉やアイラインを描くのが難しく感じられるかもしれませんが、きっちり描くと、かえって不自然な印象になります。実際には眉毛は前髪で隠れていることが多く、それほどきれいに描けている必要はありません。まつ毛も、アイラインが上手に描けなくても、伊達メガネをかけることで、目にゴミが入るのを防ぐ効果もあります。

ふだんの生活でいえば、「きっちりメイクする」というより、不自然に見えない程度にカバーするという意識で十分といえるでしょう。

東京大学医学部附属病院 乳腺・内分泌外科助教
がん相談支援センター副センター長
分田 貴子 先生

1994年東京大学教育学部卒業後、医師を目指し2002年に同医学部医学科を卒業。同大学附属病院での研修を経て、2008年より国立がん研究センター中央病院で免疫治療の研究に従事。がん治療に伴う患者さんの外見変化の問題に直面し、対処法としてカバーメイクの研究、普及に尽力。2013年に東京大学医学部附属病院カバーメイク・外見ケア外来を開設。

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