プライマリーケア(Primary Care)
プライマリーケアとは、ふだんから近くにいて、どんな病気でもすぐに診てくれ、相談に乗ってくれる医師による医療のことをいいます。
特定の病気だけを診る専門医療とは違って、患者さんを一人の人間として、総合的に診療します。緊急の場合の対応から健康診断の結果に関する相談まで行います。
また、緊急の事態が起こったり専門的な医療が必要になったりしたときは、最適の専門医を紹介してくれます。
プライマリーケアを行う医師は、そのための専門的なトレーニングを受けており、患者さんの抱える様々な問題にいつでも幅広く対応できる能力を身につけている「何でも診る専門医」です。必要に応じて、最適の専門医を紹介しますし、在宅医療や地域の保健・予防などの住民の健康を守る役目も担っています。
「プライマリーケア」という言葉の認知率は29.6%と非常に低く、「プライマリー」という外来語の意味も一般の人にはわかりにくいので、普及のためには、端的な言い換えや言い添えの必要性が高いと思われます。
病院と診療所とが密接な連携をとる「病診連携」が重視されるようになっていることなど、これからの医療体制における重要な考え方の中心にプライマリーケアがあることを、患者さんにも理解してもらうとよいのです。そのためには次のように伝えるとよいでしょう。
「これからの医療は、プライマリーケアを行う近くにいる医師と大きな病院の専門医を中心にすべての医療関係者が綿密に連携して、患者さんを優先して、人間重視の立場で互いに協力することが望まれています」
このような誤解がある
現在、日本では「プライマリーケア」という言葉が、次のように使われているために、混乱や誤解が生じています。
- 1.もともと「primary」という言葉には「主要な」「主な」「最も重要な」という意味があり、WHO(世界保健機関)や米国国立科学アカデミーでも「プライマリーケア」をこの意味に注目して定義しています。
- 2.ほかに「primary」という言葉には「初級の」「初等の」「基本の」という意味もあり、専門医療の分野の医療関係者の中には、その意味に限って使用している傾向があります。しかし、「プライマリーケア」の「プライマリー」は、その意味ではありません。
- 3.WHOが当初に提唱した「プライマリーケア」は、保健の立場、いわば一次予防(地域保健活動)の立場を強調した用語でした。これは発展途上国を念頭に置いた考え方で、先進国においては、健康保険制度や医療関係者の数・質はある程度整っているので、医療関係者と患者・家族・地域という関係で医療体制をみることが一般的です。
この観点から、国民の健康や病気に総合的・継続的に対応する医療として「プライマリーケア」の用語の普及が図られるようになりました。 - 4.看護師の世界では、「プライマリーナーシング」という言葉があり、これはある特定の患者さんの看護ケアを、入院から退院まで一人の看護師が受け持ち、継続して責任をもつ「主治看護師制」のことを指します。ここで述べている「プライマリーケア」とは違った意味をもつこととなります。
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この記事は2019年3月現在の情報となります。