薬剤師に求められるコミュニケーションスキル Vol.1

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地域包括ケアシステムにおける地域医療の担い手として、薬剤師の役割は年々重要性を増しています。
今まで以上に多職種連携が求められたり、業務も対物中心から対人重視へと変化していく中で、2006年度からスタートした6年制の薬学教育過程にはコミュニケーション教育が取り入れられるようになりました。より実用的なコミュニケーションスキルを身につけることで、薬剤師として仕事の質ややりがいはどう変わるのでしょうか。

いま、薬剤師に求められるコミュニケーションの重要性について、帝京平成大学薬学部薬学科教授の井手口直子先生に伺いました。

コミュニケーションは患者さんが
薬局に入る前から始まっている

適切な服薬指導や薬歴管理を行うためには、患者さんに薬剤の情報を提供してお薬を手渡すだけではなく、患者さんや家族から必要な情報を上手に引き出す必要があります。
しかし、現場からは、「患者さんがあまり話してくれない」という悩みが数多く聞こえてきます。

実は、コミュニケーションは患者さんと言葉を交わす前の薬局選びから始まっています。
患者さんが薬局を選ぶ理由は、病院または家に近い、待たされない、居心地がよいなどさまざまですが、立地条件などを除けば、自分にとって快適な環境かどうかが選択の決め手になります。

たとえば、ドアのガラスがいつもきれいに磨かれていて清潔感があり、内部も整えられていると、この薬局は利用する人を大切にしていると患者さんは感じるでしょう。
そして中に入ったとき、薬剤師が笑顔で声をかけたならば、
「感じがよい」「配慮が行き届いたよい薬局だ」と、いっそう好感を持つはずです。
すると患者さんは心の緊張が少しほぐれて、「ちょっと話してみよう」という気持ちになるでしょう。

ここまでがコミュニケーションの最初のステップ。次のステップである実際の会話の前に、患者さんを迎え入れる気持ちなどの土台がきちんとできていないと、接遇や会話のスキルをいくら勉強してもうまくいかないのです。

患者さんは不安や心配事を
わかってほしいと思っている

患者さんは、この人なら自分の不安や心配事を受け止めてくれそう、共感してくれそうと思ったときに、はじめて本心を打ち明けてくれます。まず薬剤師と少し話したとき、この薬剤師なら安心して話せる、相談できると思えばもう少し話してくれます。患者さんと薬剤師の信頼関係は徐々に積み上がっていき、薬剤師への信頼が増すにつれてさまざまなことを話してくれるようになります。

私自身、遥か昔ですが、薬剤師になったころは薬局薬剤師の第一の仕事は、親切にわかりやすくお薬の情報を提供することだと考えていました。しかしそうではなく、患者さんは薬剤師に病気を抱えた自分のことを受け止めてもらいたい、わかってもらいたいと思っていたのです。まず患者さんにそこで満足してもらえないと先に進めないということに気がついたのです。
私にとってこの気づきは大きく、それがファーマシューティカルコミュニケーションの研究、実践、教育といういまの仕事につながっています。

一方通行ではない、双方向のコミュニケーションを成立させるための
スキルを薬剤師が身につけ、患者さんから多くの情報を引き出せるようになれば、
薬物療法の質が向上し、地域医療にも大きく貢献することができるはずです。

帝京平成大学 薬学部 薬学科
教授 井手口 直子 先生

帝京平成大学薬学部 教授
博士(薬学) 博士(教育)

帝京大学薬学部薬学科卒業
株式会社新医療総合研究所代表取締役
日本大学薬学部専任講師、帝京平成大学准教授を経て2013年より現職

この記事は2019年12月現在の情報となります。

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