薬剤師に求められるコミュニケーションスキル Vol.2

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病気で治療中の人、とりわけがんの患者さんは大きな不安や迷いを抱えています。これらに目を向けないと、患者さんと本当の信頼関係を結ぶことはできません。心に重くのしかかっているものが多少なりとも軽くなったとき、患者さんは薬剤師のことばに耳を傾けてくれるようになります。
患者さんの不安を軽減するためのコミュニケーションでは、どのようなことが重要なのでしょうか。

帝京平成大学薬学部薬学科教授の井手口直子先生に伺いました。

患者さんの個別性、そのときの状況に応じた対応をする

保険薬局の場合、患者さんの情報は処方箋、薬歴、目の前の患者さん自身という3つのチャネルから得るのが一般的です。処方箋や薬歴という客観的な情報はもちろん大切ですが、患者さんのつらい症状など主観的な訴えを聞きながら頭の中で整理、推察し、情報化することがとても重要です。そのためには、患者さんの状況やニーズに常に敏感である必要があります。

何らかの疾患を持ち、治療が必要な状況には不安や不満、迷いがつきまといます。それを聞いてほしいという気持ちをキャッチし、共感する姿勢を示すことで患者さんは話しやすくなります。なかなか言い出せない人でも、ちょっとした情報提供や問いかけをすると、それが呼び水となり、次々と不安を話し始めてくれることはめずらしくありません。

患者さんは、いろいろな感情が入ったカゴを持っていて、カゴの中が不安などでいっぱいだと新しい情報が入っていきません。そのことに気づき、不安を少しずつ取り除いてあげると、こちらが提供する情報を受け止める余裕が生まれてきます。自分の気持ちを話すまでに少し時間がかかる人もいるので、患者さんのペースに合わせていくことが大切です。忙しいとつい薬剤師側のペースで進めがちですが、患者さんはそういう雰囲気に敏感です。

一方で、患者さん自身が急いでいるときは、それに気づかないとイライラさせてしまいます。今日は時間がなさそうだと思ったら、「お急ぎですね」と確認し、提供する情報を絞って次回につなげるなど、緩急をつけた接し方をすることも心がけましょう。

コミュニケーションでがんの患者さんを適切にサポートする

外来化学療法を受けている人や経口抗がん剤を服用している人が増え、薬剤師ががんの患者さんと密接にかかわることはめずらしいことではなくなりました。
がん医療のチームに薬剤師が加わる意義は大きく、病院に薬剤師外来を設置したことで、副作用が有意に改善し、治療の中断率が下がったというエビデンスもあります。保険薬局が地域の薬剤師外来として機能することができれば、患者さんにとっても日本の医療にとっても有益であることは明らかです。

医療専門職の中でも保険薬局の薬剤師は患者さんにとって身近な存在です。がんに特有の再発に対する不安を率直に話せること、日常生活のささいな変化について相談でき、適切な情報を提供してもらえることがわかれば、患者さんは心から信頼してくれます。
コミュニケーションをとるのに苦労する患者さんも中にはいると思いますが、そのような患者さんからこそ多くの学びを得ることができます。

ポイントは、誘導ではなく問題解決をサポートするプロフェッショナルなコミュニケーションを行うこと。これからご紹介するのはそのためのスキルです。
基本的な8つのコミュニケーションスキルを身につけ、使いこなせるようになるとコミュニケーションスキルが向上すると考えています。

帝京平成大学 薬学部 薬学科
教授 井手口 直子 先生

帝京平成大学薬学部 教授
博士(薬学) 博士(教育)

帝京大学薬学部薬学科卒業
株式会社新医療総合研究所代表取締役
日本大学薬学部専任講師、帝京平成大学准教授を経て2013年より現職

この記事は2019年12月現在の情報となります。

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