感情の明確化

感情の明確化」は、患者さん自身も意識していない服薬行動などに関する隠れた感情を、明確に言語化することで、患者さんの本当の欲求を探り出すコミュニケーションスキルです。
自分の気持ちが明確になると、その背景にある具体的な事柄を話しやすくなるという効果があります。
「開いた質問」で、患者さんに率直に気持ちを問いかける方法と、対話の中で薬剤師が患者さんの気持ちを推察して、「閉じた質問」を投げかけ確認する方法があります。

スキルアップポイント

  • 患者さんが強い調子で話したり、涙ぐむ、言いよどむなど、何らかの感情が背景にある言葉が発せられたタイミングをとらえ、その言葉(「キーワード」)を糸口に、感情を探る質問を投げかけましょう。
  • 「開いた質問」では、「そのとき、どんなお気持ちでしたか?」「先ほど、○○とおっしゃいましたが、どのようなお気持ちからそうおっしゃったのか、よろしければ教えていただけませんか?」など、率直な言葉で患者さんに問いかけます。
  • 「閉じた質問」では、対話を通して患者さんの気持ちを察した上で、「それは、『苦しい』とか『つらい』というお気持ちだったのでしょうか?」などと感情を言語化し、それを確認するという方法で使います。
  • 患者さんの本当の欲求を探り出すためには、対話の中で患者さんが発する「キーワード」をとらえることが重要です。たとえば、「薬の副作用について本当のことが知りたい」がキーワードだと判断したら、それを糸口に、「開いた質問」「閉じた質問」に加え、「共感的繰り返し」や「共感的要約」も使って患者さんの感情を明確化していきます。そのようにコミュニケーションを進めることで、具体的にどんな副作用が心配なのか、あるいはどんな副作用がQOLを低下させているのかなどを聞き出すことにつながります。
  • 服薬アドヒアランスや治療への意欲などに対して、何らかの問題を抱えていると考えられる患者さんとの対話で効果的に使ってみましょう。

患者さん「このところね…、お薬がころころ変わるからわからなくなるんだよ」
薬剤師 「確かに、よくお薬が変わっていますね。それでわからなくなるのですか?」(←閉じた質問)
患者さん「ええ。副作用があっても先生は認めないし。だけど薬ばっかりかわって…」
薬剤師 「副作用はあるのに、薬だけころころ変わっていくことにご納得がいかないのでしょうか?」(←感情の明確化のための閉じた質問)
患者さん「そうなんだよ」

井手口先生からのワンポイントアドバイス

閉じた質問をする場合には、「そうなんですよ!」と患者さんが答えられるような質問を構築します。
感情をとらえることは、その方の本音を開くドアノブのようなものです。
なかなか普段の生活で感情に触れる質問はしにくいものですが、患者さんにとっては大切な命にかかわるお話なので、共感し寄り添いながら聞いていきましょう。

帝京平成大学 薬学部 薬学科
教授 井手口 直子 先生

帝京平成大学薬学部 教授
博士(薬学) 博士(教育)

帝京大学薬学部薬学科卒業
株式会社新医療総合研究所代表取締役
日本大学薬学部専任講師、帝京平成大学准教授を経て2013年より現職

この記事は2021年4月現在の情報となります。

×
第一三共エスファ株式会社の管理外にある
ウェブサイトに移動します。

TOP