共感的励まし
「共感的励まし」は、患者さんとの対話の最後に、共感的な雰囲気の中でひらめいた励ましの言葉をかけることです。
患者さんがこれまで努力してきたことや、前向きに取り組もうとしていることに対して、ねぎらいや称賛、支援など、患者さんの励みになる言葉をかけることで、治療への意欲を高める効果が期待できるコミュニケーションスキルです。
スキルアップポイント
- どんな言葉をかけたらよいのか難しく考えるとうまくいかないので、そのとき直感的にひらめいた言葉を素直に口にするのが大切です。
- 患者さんとの対話の中で、心に湧き上がってきた素直な感情を言葉にしましょう。患者さんを支援するポジティブなメッセージが伝わり、勇気づけることにつながります。
- 場面場面に応じて、服薬の動機付けを高めるようなカウンセリングと服薬の負担を軽くするようなカウンセリングをうまく織り交ぜていきます。たとえば、「副作用が心配」という気持ちと、「早く治したい」という相反する気持ちを抱きながらも、服薬に積極的に取り組もうとしている患者さんに、「病気を治そうという前向きなお気持ちがあれば、きっとお薬の効き目もよいと思いますよ」という言葉をかけることで、患者さんの服薬への動機付けを高めることができるでしょう。
- 患者さんは、「早く治したい」という思い(服薬の動機)と、「副作用が怖い」という思い(服薬の負担)との間で悩むことが少なくありません。この2つの感情をしっかりと把握し、そのバランスをみながら動機付けのサポートである「共感的励まし」を行いましょう。
患者さん「自分の病気の新しい治療法や薬について調べてみました」
薬剤師 「ご自身の病気のことをよく知ろうとされていますね。正しい知識を持つことで、安心して治療に向かえますよね」(←共感的励まし)
患者さん「確かに、先生の説明がよくわかるようになりました」
井手口先生からのワンポイントアドバイス
「共感的励まし」は、患者さんが聞いたときに安心したり、勇気づけられたりする言葉を選びます。
薬剤師は患者さんの気持ちに寄り添うように心がけ、指導的にならないようにしましょう。
帝京平成大学 薬学部 薬学科
教授 井手口 直子 先生
帝京平成大学薬学部 教授
博士(薬学) 博士(教育)
帝京大学薬学部薬学科卒業
株式会社新医療総合研究所代表取締役
日本大学薬学部専任講師、帝京平成大学准教授を経て2013年より現職
この記事は2021年4月現在の情報となります。