味覚・嗅覚障害
味覚・嗅覚障害の症状のある患者さん向けにレシピ・食事のヒントご紹介します。
副作用対応レシピ
刺し身
1人分 エネルギー:132kcal
たんぱく質:23.2g / 脂質:2.9g / 塩分:1.3g
材料(1人分)
- ・マグロ(赤身、刺し身用) 3切れ
- ・イカ(刺し身用) 3切れ
- ・タイ(刺し身用) 2切れ
- ・大根のせん切り 10g
- ・青じそ 3枚
- ・穂じそ・むらめ 各適宜
- ・練りわさび 少量
- ・しょうゆ 小さじ1
作り方
- 刺し身とツマを盛り合わせ、しょうゆとわさびを添える。
POINT
・多くの方に、冷たくてさっぱりした新鮮な刺し身は好まれます。
・たんぱく質が補給できます。好みに応じて新鮮な魚介類を試しましょう。ただし、骨髄抑制(白血球減少)で生もの禁止の場合は避けましょう。
ちらしずし
1人分 エネルギー:393kcal
たんぱく質:12.7g / 脂質:4.3g / 塩分:2.9g
材料(2人分)
- ・熱いごはん 300g
- ・すし酢(市販品) 大さじ3
- ・卵 1個
- ・塩・水ときかたくり粉・油 各少量
- ・干ししいたけ(もどす) 2枚
- ・しいたけのもどし汁 1/2カップ
- ・しょうゆ・みりん・酒 各大さじ1/2
- ・れんこん 20g
- ・酢 大さじ1
- ・砂糖 小さじ1/2
- ・塩 小さじ1/5
- ・エビ 2尾
- ・グリーンピース 10粒
- ・桜でんぶ 大さじ1~2
- ・刻みのり 少量
- ・甘酢しょうが(せん切り) 20g
作り方
- ごはんにすし酢を混ぜてすし飯を作り、器に盛る。
- 卵はときほぐし、塩と水ときかたくり粉を混ぜる。フライパンに油を熱して卵液を流し入れ、両面を焼く。さめてから巻き、細く切る(錦糸卵)。
- しいたけは軸を除く。小なべにしいたけ、もどし汁、しょうゆ、みりん、酒を入れて汁けがなくなるまで煮る。さめてから薄く切る。
- れんこんは皮をむいて薄い半月切りにし、酢少量(分量外)を加えた湯でさっとゆでて湯をきる。酢、砂糖、塩を合わせてれんこんをつける。
- エビは下処理をしてゆでる。グリーンピースは塩ゆでにする。
- すし飯にすべての具を彩りよく散らす。
※エビは背わたを除き、腹側に串を打ってゆでる。串を抜き、尾の1節を残して殻を除き、腹に縦に切り目を入れて平らに開く。
POINT
・さっぱりとした味わいのちらしずしは、食欲がない時の強い味方になります。
・好みでいろいろな具材を使いましょう。
・これ一品で、多くの食材がとれるので、栄養のバランスもよいメニューと言えます。
冷やしそうめん
1人分 エネルギー:389kcal
POINT
・冷やしそうめんは、においがなく食べやすい料理です。氷を入れて涼しさを演出したり、野外で食べるなどの工夫もよいでしょう。
・そうめんはのど越しがよく食べやすいのでおすすめですが、ざるそばも試してみてください。
皿うどん
1人分 エネルギー:598kcal
たんぱく質:22.1g / 脂質:16.5g / 塩分:2.5g
材料(1人分)
- ・揚げめん 1玉(90g)
- ・シーフードミックス・豚薄切り肉 各30g
- ・キャベツ(ざく切り) 40g
- ・もやし(ひげ根をとる) 35g
- ・にんじん(短冊切り) 1.5cm
- ・玉ねぎ(薄切り) 15g
- ・だし 1/2カップ
- ・しょうゆ 小さじ1
- ・みりん 小さじ1/2
- ・水ときかたくり粉 小さじ1+水大さじ1/2
作り方
- なべにだし、しょうゆ、みりん、にんじん、玉ねぎを入れて煮る。にんじんがやわらかくなったらシーフード、豚肉を加え、色が変わったらキャベツともやしを加えて煮、水ときかたくり粉でとろみをつける。
- 皿に揚げめんを盛り、1をかける。
POINT
味覚や嗅覚の変化は、個人差が大きいもの。お好みで酢やからしなどを加えて味の変化を楽しんでもよいでしょう。
皿うどんは人気の一品です。
冷ややっこ
1人分 エネルギー:93kcal
たんぱく質:8.5g / 脂質:4.6g / 塩分:0.5g
材料(1人分)
- ・絹ごし豆腐 1/2丁(150g)
- ・小ねぎ 1本
- ・青じそ・みょうが・しょうが・削りガツオ・しょうゆ 各適量
作り方
- 小ねぎは小口切りにし、青じそはせん切りにする。みょうがは小口から薄く切り、しょうがはすりおろす。
- 水けをきった豆腐を器に盛り、1の薬味と削りガツオをのせ、しょうゆをかける。
POINT
・豆腐はにおいやくせがないので、味覚・嗅覚障害の時も気にせずに食べられる食材です。
・口当たりもよく食べやすいうえに貴重なたんぱく質も補給できます。
・好みの薬味を工夫すれば、いっそうおいしくいただけます。
フルーツ缶詰め
1人分 エネルギー:70kcal
POINT
・生のフルーツでもよいのですが、缶詰めなら保存がきき、手軽に食べられます。また、酸味がおさえられているので万人向き。
・食前に食べると唾液の分泌促進効果が期待できます。
彩りのよいフルーツは食欲が増進しますし、ビタミン・ミネラルが摂取できます。
味覚・嗅覚障害のヒント
PDFQ1.1週間前から、抗がん剤治療と放射線治療を併用する治療を開始していますが、味覚障害が発生しています。これはどのくらい続くのですか?
A1.味覚・嗅覚障害のヒント
味覚障害・嗅覚障害について
抗がん剤治療で使用する薬剤の一部や放射線療法(特に頭頸部)の副作用で生じることがありますが、その治療が終了すると多くは回復にむかいます。また、がんそのものによる影響で生じる場合もあります。
味覚障害のある時はにおいにも敏感となります。肉や青身の魚、納豆、野菜の煮物、においの強い野菜などは控えましょう。
- 症状出現の考え方、症状が出やすい治療法
- 味覚障害の原因は、味を感じる味蕾(みらい)細胞の減少や感受性の低下、舌神経、舌咽神経系の障害、口内乾燥、亜鉛欠乏性、心因性などによる他、口の中が不潔になっていることなどが考えられます。また、化学療法で使用する薬剤の一部、放射線療法(特に頭頸部)、その他の薬剤の副作用で生じることもあります。
- 日常生活の注意点
- 味覚障害のある時はにおいにも敏感となるため、一緒に食事をする家族の方は、においの強い食品を控えるなど配慮が必要です。
放射線療法による副作用
単独の照射 | 治療の2週ないし3週前後に始まり、通常放射線療法完了の2~4週間後には消失します。 |
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遅発作用 | 治療終了の数週間、数ヶ月、もしくは数年後に発現することもあります。 |
Q2.がん治療の副作用で味覚障害・嗅覚障害が発生しています。何を食べても味がわからず、においにも過敏になって食べられません。これらの副作用症状を緩和し食事量を増やしたいのですが、何かよい方法はありますか?
A2.味覚・嗅覚障害のヒント
味覚障害・嗅覚障害を緩和させるもの
味覚・嗅覚障害や、食欲不振そのものを予防することは難しいのですが、抗がん剤治療による口内炎や、口の中の感染症を予防したり悪化させないようにすることで、味覚障害や食欲不振を軽くすることができます。
口内乾燥、口腔感染症、舌苔などは味覚障害を助長させます。そのため十分な水分補給によって口腔内の乾燥を防ぐことと、日常的な口腔ケアが重要です。
1.うがい
口の中が乾燥すると味蕾(みらい)への伝達が悪くなり、味がわかりにくくなります。口の中をうるおった状態にするため、うがいをしましょう。
2.口の中のブラッシング
歯ブラシなどで、口の中の歯垢(しこう)や食べかすを除去します。
3.舌苔の除去
唾液の分泌が少なくなると舌の表面が乾燥し、白い舌苔が付着して味がわかりにくくなるため、ブラッシングや清拭できれいにしておきましょう。
- 症状出現の考え方、症状が出やすい治療法
- 味覚の変化や食欲不振は、抗がん剤治療を受けた人の3割前後が経験しているようです。長期間の味覚変化や食欲不振は、栄養状態の悪化を招くこととなり治療の妨げになることもあります。
- 日常生活の注意点
-
唾液の役割として、味の成分を味蕾(みらい)細胞に運搬する働きがあります。抗がん剤等の副作用によって、唾液の分泌が減少し口の中が乾燥しやすくなると味がわかりにくくなります。
味を感知する味蕾(みらい)細胞の新生には亜鉛が必要です。亜鉛※は、食欲不振による摂取量減少・抗がん剤による吸収低下などの要因により不足することがあります。
※亜鉛は、食品では特に肉類、魚類、穀類に多く含まれています。
亜鉛を多く含む食品
牡蠣、タラバガニ・ズワイガニ(水煮缶)、ホタテ貝、牛肩肉・牛もも肉(赤身)、レバー(豚・鶏)、ウナギかば焼き、卵黄、チーズ、納豆、そば、ゴマ、玄米ごはん、カシューナッツ、アーモンド
(日本食品成分表七訂2020による)
Q3.がん治療をしている主人が、味覚障害・嗅覚障害で食欲が減退し、体重も減ってきました。日常生活も含めて何か対策があれば教えてください。
A3.味覚・嗅覚障害のヒント
1.塩味やしょうゆ味などが苦く感じたり、金属のような味がする場合
- ・食前にレモンなど柑橘類やフルーツジュースで味覚を刺激し、唾液分泌を促進してみましょう(口内炎がない方)。
- ・塩の使用は控えめにしましょう。みそ味は苦く感じない人もあるようです。
- ・だしを利かせたり、ごまなどの香り、また酢なども利用してみましょう。
- ・肉、魚を甘いソースでマリネード漬けにしてみましょう。
- ・肉の赤身や味・においがダメな場合、鶏肉や卵、乳製品に切り替えてみましょう。
2.甘味が過敏になり、何を食べても甘く感じる場合
- ・砂糖やみりんは料理に使用しないようにしましょう。
- ・塩・しょうゆ・みそなどを少し濃いめの味付けにしてみましょう。
- ・汁物類は食べやすいことが多いので、試してみましょう。
- ・酢の物、ゆずやレモンなどの酸味、スパイスなどを利用してみましょう。
3.全く味を感じない場合
- ・味付けは濃いめにし、甘味・酸味・塩味などいろいろ試してみましょう。
- ・酢の物、汁物、果物などを利用してみましょう。
- ・食事の温度は、人肌程度がよいでしょう。
4.食べ物を苦く感じる場合
- ・苦みが我慢できない場合、あめやキャラメルなどで口直ししてみましょう。
- ・だしを利かせた汁物を試してみましょう。
- ・卵豆腐や茶わん蒸しは食べやすいようです。
- ・好みに応じて、薬味や香辛料を取り入れてみましょう。
- 症状出現の考え方、症状が出やすい治療法
- 化学療法による味覚障害では、「金属のような味」、「砂を噛んでいるような感じ」、「舌に膜が張ったような感じ」、「味がわかりにくい」、「味が強く感じられる」などの症状が起こります。
- 日常生活の注意点
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- 口の中を清潔にしましょう。毎食後にブラッシング、うがいをしましょう。
- 舌苔をスポンジブラシややわらかい歯ブラシで落としましょう。
- こまめに水分を口に含んで、口の中を乾燥させないようにしましょう。
- 食卓や食器、盛り付けの工夫をしましょう。
- 食事は、楽しい雰囲気で食べられる環境に気を配りましょう。
- 眺めのよい場所を選んで、いつもと違う景色で食事をしてみましょう。
出典:がん治療中の食事サポートブック2020
(公益財団法人 がん研究振興財団)
この記事は2020年10月現在の情報となります。