がん治療継続のための
アピアランスケア

がん治療中の皮膚変化とスキンケア

がん治療中の皮膚

通常、皮膚の細胞は生まれると、一定の期間で垢としてはがれ落ち、新しい細胞に生まれ変わるという、一定の周期での代謝を繰り返しています。

がん治療に用いる薬剤は、がん細胞だけでなく、正常な細胞にも影響します。薬剤の影響で正常な代謝が行われなくなると、汗や皮脂の分泌が減少して乾燥が進みます。

乾燥した皮膚は、外部刺激に対するバリア機能が弱まり、皮膚障害やシミ、色素沈着などが起こりやすくなるといわれています。

汗や皮脂の減少などによって乾燥が進むと、外部刺激(紫外線や細菌)の影響を受けやすくなります
皮膚障害がQOL低下の原因に


特に、顔の色素沈着などの皮膚変化は、「人と会いたくない」といったQOL(生活の質)低下の原因になります。
QOLが低下すると治療に積極的に取り組めなくなることがあります。治療を最後まで乗り切るためにも、皮膚変化への対策が大切です。

皮膚障害がQOL低下の原因に

ケアのポイント

がん治療中は、皮膚が乾燥しがちです。熱いお湯での洗顔・入浴や、皮膚を強くこするなどの刺激は避け、しっかりと保湿を心がけましょう。また、紫外線対策も重要です。

がん治療中のスキンケアの工夫
  • ぬるま湯で洗う
    洗顔や入浴時、熱いお湯を止め、ぬるいくらいのお湯を使うようにしました。シャワーも強く当てないようにしています。(40代女性)
  • こすらない

    刺激を与えないよう、水分の拭き取りはタオルで軽く押さえるようにしましょう

    タオルでこするのは、肌への刺激になると聞いたので、洗浄剤を泡立て肌をなでるように洗います。お風呂あがりも、タオルで軽く押さえる程度にやさしく拭くようにし、すばやくボディ用クリームを塗るようにしています。(30代男性)
  • 紫外線対策
    化学療法中は紫外線に気をつけるよう、看護師さんから指導されました。帽子や日傘、夏場はサングラスも利用しています。(50代女性)

ここが知りたいQ&A

Q がん治療中は、特別な化粧水や乳液に変えたほうがよいのでしょうか?
A かゆみやヒリヒリ感などが出ていなければ、ふだん使っているもので大丈夫です。ただ、ていねいなケアを心がけましょう。化粧水や乳液は、手に出して少し温めてからゆっくりと顔全体になじませます。温めることで浸透しやすくなります。
Q 肌が乾燥してしまうのですが、どんなスキンケア製品を選べばよいのかわかりません。
A パッケージに「敏感肌用」「アトピー肌用」などと書かれているものに変更してみましょう。乾燥が改善しない場合は、主治医に相談してください。保湿剤が処方される場合もあります。
Q 肌の黒ずみが気になって、外出しづらくなっています。
A 色素沈着は、治療が終わると徐々に薄くなっていくことが多いですが、個人差もあります。ふだんのメイクでカバーしきれない場合には、カバー効果の高いファンデーションを使うとよいでしょう。「カバーメイク用」の製品もあります。

使用する際は、最初に少し塗ってかゆみや赤みが出ないことを確認しましょう。かゆみや赤みが出た場合にはすぐに落とします。

ドクターからのアドバイス

がん治療中は、薬剤による影響で、肌が乾燥しがちになります。また、時間や心理的な余裕が減り、スキンケアがおろそかにもなりがちです。

がん治療に伴う皮膚の症状は、予防できる確実な方法はありませんが、少なくともスキンケアによって、皮膚をよい状態に保っておくことは、症状を悪化させないために重要なことです。ぬるま湯を使う、肌をこすらない、クリームやローションを塗るなど、できる範囲のスキンケアを心がけましょう。

また、皮膚は紫外線の刺激を受けやすくなるため、紫外線対策も行いましょう。

分田 貴子先生
東京大学医学部附属病院
がん相談支援センター 医師
分田 貴子 先生


1994年東京大学教育学部卒業後、医師を目指し2002年に同医学部医学科を卒業。同大学附属病院での研修を経て、2008年より国立がん研究センター中央病院で免疫治療の研究に従事。がん治療に伴う患者さんの外見変化の問題に直面し、対処法としてカバーメイクの研究、普及に尽力。2013年に東京大学医学部附属病院カバーメイク・外見ケア外来を開設。

この記事は2021年9月現在の情報となります。

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