口腔ケア
がん薬物療法とお口のトラブル ~口腔乾燥~
抗がん剤治療や、お口の周辺に放射線が照射される放射線治療では、唾液の分泌が低下する副作用が起こることがあります。唾液が少ないと、口の中がガサガサと不快になり、喋りづらい、食べづらくなり、時には痛みを感じることもあります。
乾燥はお口のトラブルのもとになる
							唾液にはお口のための重要な役割がたくさんあります(表)。
							
そのため唾液の減少は、それ自体が不快なだけでなく、色々なお口のトラブルを引き起こします。
							
							
食事の味が感じづらくなり、汚れが取りづらくなるために口の細菌が増え、歯肉炎などお口の感染を起こしやすくなったり、むし歯ができやすくなります。義歯の安定や吸着には唾液が必要なため、義歯が不安定になって外れやすくなったり、粘膜への刺激が増えて痛みが出たりします。
						
唾液の役割
| 働き | 役割 | 
|---|---|
| 保湿作用 粘膜保護作用 潤滑作用  | 
										粘液性たんぱく質であるムチンやプロリンリッチプロテインは粘膜を保湿したり、刺激から保護したり、食品の流れを良くし咀嚼や嚥下を滑らかにします。 | 
| 自浄作用 | 歯や粘膜に付着した食物残渣(しょくもつざんさ)や細菌を物理的に洗い流します。 | 
| 消化作用 | 食物中のデンプンを分解し、腸で吸収しやすくします。 | 
| 溶媒作用 | 食物中の味物質を溶解し、味を感じる細胞に味物質を運びます。 | 
| 緩衝作用 | 口の中をpH6.8~7.0の中性に保ちます。 | 
| 再石灰化作用 | 虫歯になりかかった歯の表面に沈着し、再石灰化を促します。 | 
| 抗菌・抗炎症作用 | 唾液中の抗菌・免疫物質により、細菌や真菌の増殖を抑え、感染症を予防したり、炎症を抑えたりします。 | 
| 治癒促進作用 | 唾液に含まれる細胞増殖因子が粘膜に作用し、傷の治りを早めます。 | 
口腔乾燥への対応
- 
								保湿
								
保湿効果のあるもので口内を湿潤させます。
 
								各種保湿剤(保湿ジェル、保湿スプレー)
								
水、レモン水、2%重曹水 氷片を口に含む
								
グリセリン含有の含嗽(がんそう)液、人工唾液
								
白ごま油の少量塗布(強い口腔乾燥に)
								
(※市販の含嗽剤は要注意(アルコール成分は乾燥を助長させる))
							
- 
								蒸散予防
								
口腔からの水分の蒸発を抑えることで、乾燥を緩和します。夜間お休みの間に口腔内の水分はどんどん蒸散してしまいます。
マスクをして眠るなどの工夫で起床時の乾燥感が和らぐこともあります。 
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								唾液腺マッサージ
								
唾液を分泌する唾液腺には、顎下線(がくかせん)・舌下腺(ぜっかせん)及び耳下腺(じかせん)の3つがあります。唾液腺をマッサージし、唾液の分泌量を促し、乾燥を和らげます。
 
耳下腺マッサージ
								指を頬にあて、上の奥歯のあたりを後ろから前へ回すようにマッサージします。
顎下腺マッサージ
								親指をあごの骨の内側のやわらかい部分にあて、耳の下からあごの下まで押すようにマッサージします。
舌下腺マッサージ
								両手の親指をそろえ、あごの真下から舌をつき上げるように、ゆっくりグーッと押すようにマッサージします。
出典:がん治療と食生活 ~栄養士・歯科医・看護師からのヒント~(公益財団法人 がん研究振興財団)
がん治療とお口の関係
がん治療中のお口のトラブルとその対策
がん治療前に歯科でお口のチェックとお手入れを
この記事は2019年8月現在の情報となります。
